所有不動産記録証明制度とは何か?これまでの制度との比較、変更点を解説

 

はじめに

 2024年に相続登記が義務化されたことで、不動産相続に関する手続きが注目を集めています。その中で新たに導入されたのが「所有不動産記録証明制度」です。この制度は、相続人が被相続人の所有していた不動産を簡単に把握できるようにするために作られたものです。

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 本記事では、所有不動産記録証明制度とは何か、これまでの制度との違いや変更点、そしてどのように相続手続きを助けるのかを詳しく解説します。

1 所有不動産記録証明制度とは?

 所有不動産記録証明制度は、被相続人が所有していた不動産の一覧を一括で確認できる仕組みです。この制度により、相続人が対象となる不動産を調べる際の負担が大幅に軽減されます。

⑴ 制度の概要

 これまで、被相続人の所有する不動産を確認するには、不動産が所在する各地域の法務局や役所を個別に訪問し、資料を集める必要がありました。しかし、所有不動産記録証明制度では、被相続人の戸籍や住民票をもとに、全国の不動産情報を一括で取得することが可能となります。

⑵ 制度創設の背景

 従来の不動産登記制度は「物的編成主義」を採用しており、不動産単位で登記記録を管理していました。このため、特定の登記名義人が所有する不動産情報を一括で抽出する仕組みはありませんでした。その結果、相続人が被相続人の所有不動産を把握するためには、各地の法務局を訪問し情報を収集する必要がありました。この点が手続きの複雑さや負担の一因となっていました。

 所有不動産記録証明制度は、相続登記義務化に伴い登記漏れを防ぐ目的で設けられ、被相続人または自身が登記名義人となっている不動産の情報を一括して証明する仕組みです。

⑶ 主な特徴

 所有不動産記録証明制度は、相続登記義務化に伴い登記漏れを防ぐ目的で設けられ、被相続人または自身が登記名義人となっている不動産の情報を一括して証明する仕組みです。

  • 全国一括検索:被相続人が複数の地域に不動産を所有している場合でも、一度の手続きで全ての情報を取得可能。
  • 簡便性の向上:複数の役所を訪れる必要がなくなり、手続きが効率化。
  • 低コスト化:一括取得により、各地での書類取得にかかる費用を削減。

⑷ 技術的限界

 この制度は登記記録の電子データに基づいて情報を提供するため、登記名義人の旧住所が記録されたままの場合など、検索結果に漏れが生じる可能性があります。正確な情報を得るためには、検索キーに旧住所や旧氏名を含めるなどの工夫が必要です。

2 これまでの制度との比較

① これまでの手続き

 以前は、被相続人の所有する不動産を調べるためには、以下のようなステップを踏む必要がありました。

 ① 被相続人の住所地を基に、最寄りの法務局で土地・建物の登記情報を取得。

 ② 被相続人が過去に住んでいた住所や別荘地などを推測し、それぞれの地域の法務局で同様の手続きを繰り返す。

 ③ 不動産の所在を特定できない場合、不動産に関する情報が揃わず、手続きが滞ることもありました。

② 所有不動産記録証明制度の変更点

 ① 一括取得可能:これまで個別の法務局を訪問する必要がありましたが、この制度では全国の不動産情報を一度に確認可能。

 ② 検索効率の向上:被相続人の戸籍や住民票を基に法務局が自動的に検索を行うため、相続人が地域を推測する必要がありません。

 ③ 情報の正確性:全国の法務局データベースを利用するため、不動産の漏れが発生しにくい仕組みとなっています。

3 制度の具体的な活用方法

⑴ 相続人申告登記制度

利用の流れ

  1. 申請準備
    • 被相続人の戸籍謄本や住民票除票を用意。
    • 相続人自身の本人確認書類を準備。
  2. 申請手続き
    • 最寄りの法務局で所有不動産記録証明の申請を行う。
    • 必要な手数料を支払う(地域や物件数に応じて異なる場合あり)。
  3. 証明書の受け取り
    • 証明書には、被相続人が所有していた不動産の所在地や登記情報が記載されている。

注意点

 ・事前の確認が必要:証明書の取得には被相続人の正確な戸籍情報が必要です。

 ・利用範囲の制限:相続人としての立場が確認できない場合は申請が認められないことがあります。

4 相続登記におけるメリット

不動産の漏れを防ぐ

 所有不動産記録証明制度では、被相続人が所有していたすべての不動産がリストアップされるため、相続手続きにおいて不動産が見落とされるリスクが減少します。これにより、後から「知らない不動産が見つかった」という問題が発生しにくくなります。

手続きの効率化

 複数の地域に不動産を所有している場合でも、一度の申請で全ての情報を取得できるため、手続きがスムーズに進みます。また、相続人間での共有が簡単になり、遺産分割協議の効率も向上します。

コスト削減

 これまで、各地の法務局や役所を訪問するために発生していた交通費や書類取得費用が削減されます。一括取得により、相続人の負担が軽減される点も大きなメリットです。

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5 制度導入の意義

 所有不動産記録証明制度は、相続登記義務化とともに導入された新しい仕組みであり、相続人の負担を軽減する重要な役割を果たしています。この制度は、相続手続きの透明性と効率性を高めると同時に、所有者不明土地問題の解消にも寄与するものです。

6 まとめ

 所有不動産記録証明制度は、相続人が被相続人の不動産を正確かつ効率的に把握するための画期的な仕組みです。これまでの制度と比較して、情報の一括取得や手続きの簡便化など、多くの利点があります。

 相続登記の手続きが不安な方や、不動産情報の取得に悩んでいる方は、ぜひこの制度を活用してください。また、手続きに不明点がある場合は、専門家への相談をお勧めします。弊所では、相続登記に関するあらゆるサポートを提供していますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

弁護士の的場崇樹(まとば たかき)
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