所有者不明土地の現状と問題点:なぜ今対策が必要なのか?

 

はじめに

 皆さんは「所有者不明土地」という言葉を聞いたことがありますか?これは、誰が持ち主なのか分からない土地のことです。日本では、こうした土地がどんどん増えていて、大きな問題になっています。弊所でも、所有者不明土地に関する相談を多く受けており、その中には相続や登記の手続きを放置した結果、トラブルに発展したケースもあります。今回は、法律事務所の視点から、所有者不明土地の現状や問題点、そしてなぜ今対策が必要なのかを詳しく解説します。

1 所有者不明土地とは?

⑴ 所有者不明土地の定義

 所有者不明土地とは、登記簿上の持ち主が古いままだったり、持ち主が分かっていても連絡が取れない土地のことです。例えば、祖父母の名義のまま放置された土地や、相続手続きがされずに何代も持ち主が変わらない土地が該当します。

 相続登記義務化は、これらの問題を解消し、不動産の適切な管理と利用を促進するために導入されました。この制度により、相続人は一定期間内に登記を行う義務を負うことになります。

⑵ なぜ増えているの?

① 相続手続きが行われない

 日本では相続手続きが義務ではなかったため、土地が名義変更されないまま放置されることがよくありました。弊所が扱った事例の中には、相続人同士で意見がまとまらず、登記が長期間放置されたケースもあります。

② 都市部への人口集中

 若い世代が都市部に移住し、田舎の土地が放置されるケースが増えています。特に地方では、価値が低い土地の管理を手放す人も多く、相談の件数も増加しています。 

③ 土地の価値が低い

 活用しにくい土地や価値が低い土地の場合、相続人が手続きをするメリットが少なく、そのまま放置されてしまいます。法律事務所としても、こうしたケースでの対応方法についてご相談いただくことが多いです。

2 所有者不明土地の現状

⑴ 全国に広がる所有者不明土地

 国の調査によると、平成28年度の地籍調査で調べた土地の約20%が所有者の所在が確認できない土地でした。その原因の約67%が相続未登記、32%が住所変更未登記によるものでした。さらに、最終的に所在不明のままだった土地の割合は約0.4%でしたが、これは特に商品性の低い土地で多く見られます。

⑵ 地方だけの問題ではない

 所有者不明土地は田舎だけの問題ではありません。都市部でも古い住宅地や放置された商業地などで所有者が不明な土地が増えています。弊所では、再開発計画が所有者不明土地のために停滞しているといった相談も受けています。

3 所有者不明土地が引き起こす問題

⑴ 社会への影響

① 災害時の危険

 所有者が不明の土地では、管理が行われず、倒木や崩落などの危険が増えます。災害時の避難経路確保にも影響します。特に地方自治体からの問い合わせが増えています。

② 行政コストの増加

 地籍調査や管理に時間と労力がかかり、多額の税金が使われています。

⑵ 経済への影響

① 土地の有効活用ができない

 所有者が分からないと、土地を売買したり活用したりすることができません。

② 地域の衰退

 商業地や住宅地で所有者不明土地が増えると、地域の活力が失われます。

⑶ 個人への影響

① 相続人への負担

 相続手続きがされていない土地は、将来的に相続人がトラブルに巻き込まれる可能性があります。

② 固定資産税の徴収漏れ

 名義変更がされていないため、行政が課税対象を把握できず、税収減少につながっています。

4 なぜ今対策が必要なのか?

⑴ 問題の深刻化

 所有者不明土地が増えると、問題がさらに複雑になります。災害対応やインフラ整備が遅れるだけでなく、土地の有効活用ができなくなり、日本全体の経済にも悪影響を及ぼします。

⑵ 新しい法律の施行

 2024年から、相続登記が義務化されました。この法律は、所有者不明土地を減らすための大きな一歩です。また、「所有不動産記録証明制度」や「戸籍の広域交付制度」など、手続きを簡単にする仕組みも整備されています。

 具体的に、不動産登記法の改正では次のような新たな制度が導入されています:

  1. 相続登記の義務化
    • 相続開始と所有権取得を知った日から3年以内に登記を行う必要があります。
    • 正当な理由なくこれを怠ると、10万円以下の過料が科されます。
    • さらに詳しい情報については、以下の記事をご覧ください: 相続登記の義務化とその背景
  2. 相続人申告登記制度
    • 遺産分割がまとまらない場合でも、相続人が自身が相続人である旨を申告することで義務を履行したとみなされます。
    • この制度について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください: 相続人申告登記制度の詳細解説
  3. 所有不動産記録証明制度
    • 特定の登記名義人が所有する不動産を一覧化した証明書を発行する制度で、相続登記漏れを防ぐ役割を果たします。
    • この制度についてさらに知りたい方は、以下の記事をご覧ください: 所有不動産記録証明制度とは?

私たちができること

 土地を持っている人や相続する予定のある人は、今のうちに手続きを進めることが大切です。弊所では、所有者不明土地に関する具体的な解決方法を提案し、相続登記の手続き代行やトラブル防止のサポートを行っています。

5 まとめ

 所有者不明土地の問題は、日本全体に大きな影響を与えています。しかし、新しい法律や制度を活用することで、この問題に立ち向かうことができます。法律事務所としても、所有者不明土地の解決に向けたサポートを強化していきます。

 特に、所有不動産記録証明制度や相続人申告登記制度などの新たな仕組みを活用することで、相続手続きの負担を大幅に軽減できます。自分の土地や相続の状況を確認し、必要な手続きを進めることで、社会全体の負担を軽減することに貢献できます。

 所有者不明土地に関するお悩みや手続きについては、ぜひ弊所にご相談ください。専門の弁護士が親身に対応いたします。

弁護士の的場崇樹(まとば たかき)
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