遺言執行と遺言執行者とは?遺言執行者選任申立の手続きの流れ
遺言は、被相続人が自分の気持ちを死後に残すためのものです。遺言が作成されている場合、相続人が受け継ぐ遺産は法定相続分に関わらず遺言の内容通りに分配されます。しかし、遺言の内容通りに遺産の分配が行われなくても相続人はペナルティを受けることはありません。また相続人全員の合意があれば遺言とは異なる方法で相続を行うことも許されます。そういったことを避け、遺言に基づく相続を円滑に進めたいのであれば、遺言執行者が必要となるでしょう。
今回の記事では、遺言執行の手順やそこで遺言執行者が果たす役割、遺言執行者が指定されていない場合の遺言執行者選任申立の手続きの流れを解説します。
目次
遺言執行の手続きの流れ
被相続人が遺言を残して亡くなった場合、相続は遺言の内容に基づき行われます。その場合に行われる手続きが、遺言執行です。遺言執行の手続きの流れですが、まず遺言書の有無を確認する作業から始めます。遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」があるのですが、「自筆証書遺言」と「秘密証書遺言」は、検認手続で改ざんや偽造がないことを確認できたら法的な効力を持つ遺言書として認められます。
法的な効力を持つ遺言書がある場合、遺言執行者が指定されていたら候補者は就任を承諾あるいは拒否するのかを決めます。遺言執行者の就任を候補者が拒否した場合、遺言執行者の指定がない場合には遺言執行者の選任をするかどうかを遺族が話し合います。なお、遺言執行者は定めることは法的な義務ではありません。遺言執行者が就任をしたら、相続人の調査を行います。調査では、被相続人の戸籍謄本等を本籍地から取り寄せて書かれている内容を確認します。
相続人の調査で相続人を残らず明らかにしたら、遺言執行者は全ての相続人に対して「遺言執行者就任通知書」を送ります。「遺言執行者就任通知書」では、誰が遺言執行者に就任したのかを示すことに加えて、遺言執行者の権限について説明する文章と遺言書のコピーも同封するのが一般的です。続いて遺産の調査を行います。銀行預金や不動産などプラスの財産に加えて、ローンや友人からの借り入れなどマイナスの財産もないか調べます。被相続人が残したプラス・マイナスの財産がどれくらいあるのかを調べるためには、法務局や金融機関などの関係各所に記録を出して欲しいとお願いをしなければいけません。
プラス・マイナスの財産を全て把握できたら、財産目録の作成です。財産目録は、手書きとパソコンのどちらで作成しても構いません。不動産ならば所在地や面積など、預貯金は金融機関名や支店名などを正確に記入していきます。評価額や預金額も記入しておくのですが、不動産のように時価の財産もあります。財産目録の作成をするときには、基準とした時点を明記しておきましょう。
相続人と遺産が全て明らかになったら、遺言の内容に沿った相続ができるように手続きを進めます。不動産であれば法務局での登記申請をし、預貯金は解約するか名義を変更します。株式等の財産も名義の変更が必要です。物で相続できないものは換金をしてから分配をします。登記の変更など必要な手続きを済ませ現金も分配したら、遺言執行は完了です。遺言執行人は、すべての相続人に「遺言執行完了通知」を送付して役割を終えます。
遺言執行の手続きを進めることで得られる効果
遺言執行の手続きを進めることで得られる効果は、円滑に相続が行えることです。遺言がなく遺言執行者もいない状態では、相続人は自分の利益を最大とするために他の相続人と遺産を巡って争うこともありえます。一方で遺言執行の手続きを進める場合は、遺言執行者が相続人と力を合わせて相続の手続きを進めていきます。遺産の取り分を巡って相続人同士が衝突しそうなときにも、遺言執行者が間に立ってトラブルを解決しようと尽力するので最悪のケースは回避できます。
遺言執行者とはどのような人か
遺言執行者は、簡単に言えば遺言の内容を実現するために手続きをする人のことです。民法1012条1項では、遺言執行者が相続人に対して遺言の執行をするべく権利を行使できると書かれています。遺言執行者は相続人に対して強い権限を持っているので、相続を開始するときに遺言執行者を定めておくことで遺言執行を円滑に執り行えるようになります。その遺言執行者ですが、未成年や破産者以外ならば誰でもなれます。相続人でも問題はありません。しかしながら、相続人が遺言執行者になることで、他の相続人が反発することもあります。弁護士など第三者として相続に関わる人に専任した方が無難でしょう。
遺言執行者選任申立の手続きはどうすればいいのか
遺言執行者が遺言で指定されていない、遺言執行者が相続の開始時に亡くなっている、指定された候補者が就任を拒否した、という場合には遺言執行者を選任することが可能です。遺言執行者選任の申立は、相続人や遺言者の債権者など利害関係者が行うことができます。遺言執行者選任を申し立てる先は、被相続人が最後に住んでいた住所地を管轄する家庭裁判所です。申立書に、被相続人が亡くなっていることが記載された戸籍謄本、遺言執行者候補者の住民票又は戸籍附票、遺言書の写し又は遺言書の検印調書謄本の写し、利害関係を証明する資料などを添付して提出をします。申立をする前に入手できない戸籍等は、申立後に追加提出することもできます。
書類提出後、不備がなければ1~3週間程度で申立人と遺言執行者候補者のもとに照会書(回答書)という書面が送付されます。照会書(回答書)の内容は、遺言執行者候補者に就任の意思があるのか、欠格事項(未成年者・破産者)ではないのか、といったことを確認する質問です。質問に対する回答を記入した後に、家庭裁判所へ返送をすれば審議が行われます。審議には1~2週間程度かかり、問題がなければ遺言執行者を専任する審判がでます。審判から2週間以内に不服申立がなければ、その内容が確定するという流れです。
審判の確定後、申立人と遺言執行者のもとに遺言執行者選任審判書謄本が送付されます。遺言執行者選任審判書謄本は、遺言執行に関わる各種手続きで必要となるものですから大事に保管しなければいけません。この遺言執行者選任申立で必要な費用は、執行の対象となる遺言書1通につき800円分の収入印紙と連絡用の郵便切手です。
まとめ 遺言執行の手続きを円滑に進めるために何をすれば良いのか
遺言執行の手続きの流れを見ていくと、やるべきことが多々あります。相続執行人を定めることで、遺言執行の手続きを円滑に進めることができるでしょうが、いないときには家庭裁判所に遺言執行者選任申立をしなければいけません。そこで、誰を遺言執行者候補者とするべきかで相続人同士が衝突する恐れもあります。相続人に遺言執行についての知識があまりなく、遺言執行者候補者を簡単に決めることができないというのであれば、弁護士のような相続の専門家に頼るのも一つの手です。専門家であれば、様々なケースを経験しているので必要なアドバイスをしてくれますし、第三者として粛々と遺言執行の手続きを進めてくれるので安心して任せられます。
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