相続に関わりたくないなら相続放棄?相続持分の譲渡も使えます
亡くなられた方の財産の相続が発生した場合、受け取ることを希望するかしないかは、人や状況によってそれぞれです。時には、財産を相続したくないこともあるでしょう。また、不動産などの形ではなく現金で受け取りたい、遺産分割協議のトラブルに巻き込まれたくない、といった要望もあるかもしれません。
相続をしないというと、負債が多い場合の「相続放棄」が有名ですが、「相続持分の譲渡」という方法を取ることもできるのをご存じでしょうか。
この記事では、「相続持ち分の譲渡」でできることから注意点、相続発生前と後の譲渡で異なるポイントまで、詳しく解説します。
目次
1 相続持分の譲渡とは?
相続持分の譲渡とは、一般に相続分の譲渡ともいい、相続人(遺産を相続する人)が、法定相続分を他者に譲り渡すことを意味します。法定相続分とは、相続人が遺産を相続できる権利の割合のことです。
例えば夫が亡くなった場合、妻に1/2を、二人の子どものうち息子に1/4、娘に1/4というように定められる割合です。この場合、相続人である息子は、自分が受け取る権利のある1/4の相続分を誰かに譲ることができます。
譲受人(譲ってもらう側の人)は同じ相続人である妻や娘でも構いませんし、息子自身の妻や子どもなど、相続者以外の親族や第三者であっても可能です。他の相続人の同意を得る必要もありません。
譲渡に際して、売却等により対価を得ても(有償の譲渡)、得なくても(無償の譲渡)問題はありません。譲る割合も自分の持ち分の1/4すべてでも、一部でも大丈夫です。
ただし、譲渡相手や有償無償の違いにより、税金の支払い義務が生じる場合があります。注意点として、譲渡できるのは遺産そのものではなく、相続する割合であることを覚えておきましょう。
例えば、財産の種類を指定して「自宅を息子に相続させる」という遺言がある場合、相続分の譲渡という形にすることができません。また、「譲渡が可能なのは遺産分割が成立する前まで」と、タイムリミットが決められている点も重要です。
2 必要な手続きの流れを解説
相続分の譲渡手続きに、裁判所での手続きは不要です。譲渡人と譲受人の合意があれば成立し、法的には口約束でも成立するとされますが、財産にかかわることですから書面を作成するのが望ましいでしょう。下記のような手続きがありますが、個人で行うのが不安な場合は信頼できる弁護士に相談すると安心です。
⑴ 「相続分譲渡証明書」を作成する
相続分の譲渡を行った事実が証明できる「相続分譲渡証明書」又は相続分譲渡の合意書を作成します。
譲渡の条件をお互いにはっきりと確認し、譲渡する持ち分の割合や、有償無償の区別(有償の場合は金額も)と、負債がある場合の取り扱いも明記しておきましょう。印鑑は実印が望ましいとされています。
⑵ 「相続分譲渡通知書」を作成して発送する
相続人以外の第三者に相続持分を譲渡した場合には、相続分の譲渡を行ったことがわかる「相続分譲渡通知書」を作成して、他の相続人宛に発送しましょう。発送は「配達証明付き内容証明郵便」が安心です。
第三者に相続分の譲渡が行われた場合は、他の相続人には「取戻権」という権利があり、譲受人が支払った対価などを償還することで持ち分を取り戻すことが可能です。
譲渡が行われてから1か月以内という期限がありますが、譲受人の同意は必要ありません。
3 譲渡の効果によるメリット・デメリット
相続分の譲渡のメリットには、下記の4点が挙げられるでしょう。
- 遺産分割協議に参加する必要がなくなり、遺産分割のトラブルに関わらずに済む
- 自分の譲りたい相手を選んで、相続分を譲渡できる
- 遺産分割には時間がかかりがちだが、有償の譲渡を行えば、対価として比較的早く金銭などを受け取れる
- 相続人が減ることで、遺産分割協議がスムーズに進みやすくなる
一方、デメリットとして、相続財産に借金などの負債があった場合、相続持分を譲渡した後であっても、債権者から請求が来ることがあります。基本的には遺産も負債も譲受人が引き継ぎますが、債権者から要求されたときには譲渡人にも返済の義務が生じるのです。債務がある場合などは、相続分の譲渡を行うより相続放棄を行うほうが良い場合もありますので、慎重に決断しましょう。
4 相続発生前に相続持分を譲渡することはできる?
結論としては、被相続人がなくなる前に、自己の相続持分を譲渡することはできません。そもそも、被相続人が亡くなるまで、相続人が相続人の地位を有しているかどうか、その相続持分割合も不明確といえるからです。
5 まとめ 相続持分の譲渡は、安心して行えるよう弁護士に相談してみることをおすすめします
亡くなった方の財産や負債などすべてを引き継ぐ相続は、財産の多い少ないにかかわらず、人生の大きな問題です。
親族だからと口約束で済ませると、トラブルになってしまう可能性もあるでしょう。事前によく考えて決めたことであっても、亡くなった人の遺志が法的に通らない場合もあります。
また、相続に関する法律は改正が重ねられているため、今日正しいことが明日も正解とは限りません。もし、少しでも不安があれば、しっかり対応してくれる弁護士に相談してみるのがオススメです。
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