相続人がいない人の相続はどうなるのか?
「相続財産管理人」という言葉を聞いたことがある人はほぼいないのではないでしょうか?
相続人がいない場合、相続人全員が相続放棄をしてしまった場合など、亡くなられた方の財産が放置されてしまった場合には、相続財産管理人を選任する必要があります。
相続財産管理人は、相続財産を保全し、清算し、分配する役割を担います。
相続財産管理人には特別な資格は必要ありませんが、一定の条件が必要です。
相続財産管理人を選任するためには、家庭裁判所に申立てをおこない、相続財産管理人選任に必要な書類が必要となります。相続財産管理人に遺産を管理してもらうときには、しっかりとした知識を身に付けておき、トラブルに発展するリスクを減らすことが大切です。
今回は、相続財産管理人を選任すべきケースや選任方法、申立に必要な書類・費用などを解説します。
目次
相続財産管理人を選任すべきケースとは?
相続財産管理人とは、相続人がいない場合や、すべての相続人が相続放棄や限定承認した場合などに、相続人の代わりに相続財産を管理する人のことです。相続財産管理人を選任しないと、被相続人の財産を処理できない場合、すなわち、相続財産管理人を選任できる場合とは、以下のような場合です。
⑴ 被相続人に相続人がいない場合
被相続人の配偶者や子ども、親・兄弟姉妹及びその子などの法定相続人がすべて亡くなっているか、存在しない場合のことを指します。
⑵ 相続人全員が相続放棄をした場合
被相続人の法定相続人がすべて、相続財産を受け取らないことを選択した場合のことを指します。
相続財産管理人を選任する必要がある場面
相続人がいない場合に、全ての案件で、相続財産管理人が選任されるわけではありません。
以下の場合に、相続財産管理人の選任申立が行われる傾向にあります。
⑴ 債権者が返済を希望する場合
債権者が借金の返済を希望する場合です。
銀行等が、生前に被相続人に対してお金を貸付けていた場合がこの典型的場合です。
債権者は、相続人がいる場合には、相続人全員に対して法定相続分に応じた金額の借金返済のを請求が可能です。
もっとも、相続人がいない場合や、相続人全員が相続放棄した場合は、債権者は相続財産管理人に対して、相続財産から返済をするよう請求できるようになります。
⑵ 空き家が放置されている場合
最近多いのが、被相続人が居住していた住居が空き家のまま放置されている場合です。
本来的には、相続人が被相続人が居住していた不動産を売却、取り壊す等して、処分しますが、相続人がいない場合には、空き家が放置されてしまうことになります。空き家を放置すると、倒壊や火災発生の危険があるため、近隣住民は不安を感じてしまいます。その際に、地方公共団体等が、相続財産管理人の選任を申立てることがあります。
⑶ 特別縁故者が相続を受けたい場合
被相続人と特別親しい関係にあった人が遺産の取得を希望する場合、相続財産管理人の選任を申し立てる必要があります。他に相続人がおらず、被相続人の面倒を看る人がいなかったため、これらの人に代わって被相続人の面倒を看ていた人が相続財産を取得したい場合に相続財産管理人の選任を申し立てる必要があるということです。
特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた者や被相続人の療養看護に努めたものをいい、具体的には、内縁の妻や同居していた親しい友人等が挙げられます。
相続財産管理人の選任方法とは?
相続財産管理人の選任を求めることができる主体は、利害関係人や債権者、検察官などです。家庭裁判所に申し立てるときには、書面を用意して、相続財産管理人の選任の理由や相続財産の概要などを記載します。選任方法としては、相続財産の管理に適した人物が選ばれます。弁護士や司法書士などの法律の専門家が選ばれる場合が多いです。
相続財産管理人の申立に必要な書類・費用
相続財産管理人の申立に必要な書類として、以下が挙げられます。
- 申立書
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 被相続人の両親の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
- 相続人がいないことを証明できる戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本すべて
- 財産の資料(不動産登記事項証明書、残高証明書など)
- 利害関係人からの申立ての場合、利害関係を証明する資料(戸籍謄本や金銭消費貸借契約書など)
- 財産管理人候補者の住民票又は戸籍附票
- 相続財産目録
申立書には、相続財産管理人になりたい人の氏名・住所・年齢・職業などの個人情報と、相続財産管理人になる理由や相続財産の概要などを記入します。相続財産目録には、相続財産の種類・数量・価額などを詳しく記載します。
申立に必要な費用は、予納金、手数料としての収入印紙800円分と連絡用の郵便切手です。
申立にもっともネックになるのが、予納金になります。この予納金には、相続財産管理人の報酬、実費が含まれるため、数十万円から100万円ていどが必要となる場合があります。
予納金の金額は、被相続人が残した財産の種類、性質等により異なるため、明確な金額は事案によりますが、比較的高額になることを覚悟すべきです。もっとも、被相続人の遺産が十分に残されている場合には、当該遺産から回収が可能です。
相続財産管理人がおこなうこととは?
相続財産管理人がおこなうことは、主に以下の3つです。
⑴ 相続財産の管理
相続財産管理人は、相続財産を保全し、必要な支出をおこないます。相続財産は、不動産や預金、株式などです。相続財産管理人は、これらの財産を適切に管理する義務があります。
例えば、不動産の場合は、固定資産税や管理費の納付などです。 預金や株式の場合は、適切な運用をおこなったり、必要に応じて売却したりすることもあります。相続財産管理人は、相続財産の目録を作成し、家庭裁判所に提出する義務があります。
⑵ 相続財産の換価
相続財産管理人は、相続財産を売却し、現金化します。売却・現金化には、家庭裁判所の許可が必要です。相続財産を換価して得られた現金は、債務の弁済、後述する分配金、相続財産管理手続きの費用等に充てられます。
⑶ 相続財産の清算・分配
相続財産の清算後に残った現金は、国庫に納められます。相続人が現れた場合や、相続放棄を取り消した場合は、国庫から相続財産を受け取ることができます。その際には、家庭裁判所に申立てをおこなう必要があります。
まとめ 相続財産管理人について
相続人がいない場合、相続人全員が相続放棄をした場合に、相続財産管理人の選任が必要です。
相続財産管理人は、専門知識や経験が必要な仕事であることから、弁護士や司法書士などの法律専門職が選任される場合が多いです。相続財産管理人の選任申立を考える場合は、まず弁護士に相談することをおすすめいたします。
弁護士は、相続財産管理人の選任の必要性や手続きの方法、費用や期間などを詳しく説明してくれます。疑問や不安がある場合は、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
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