遺産分割における不動産価値の評価方法

 

 遺産分割において、不動産の評価は非常に重要な要素となります。不動産は多くの場合、遺産の中で高価な資産であり、その評価額が適正でなければ相続人間の公平な分割が困難になります。

 特に、不動産の分割方法として、換価分割や代償分割が選択された場合には、不動産の評価額に応じた金額が相続人に支払われることになりますから、不動産をどのように評価するかが極めて重要です。

 本記事では、不動産の価値をどのように評価するか、その評価方法と具体的な遺産分割の方法について詳しく説明します。

1 不動産の分割方法

 遺産分割における不動産の分割方法には以下のものがあります。

⑴ 共有分割

 不動産を相続人全員の共有財産とする方法です。相続人全員が共有持分を持つ形で分割します。しかし、共有状態が続くと、不動産の管理や処分に関して意見の不一致が生じやすいため、将来的な問題が生じやすいという特徴があります。

⑵ 代償分割

 特定の相続人が不動産を取得し、その代わりに他の相続人に代償金を支払う方法です。例えば、不動産の評価額が1億円で、相続人が2人の場合、各相続人の法定相続分は5000万円です。不動産を取得する相続人は、他の相続人に5000万円の代償金を支払うことになります。

 この方法は、不動産を現金に換算して他の相続人に対して公平に分配することが可能です。代償金の金額を適切に算定することが重要です。

⑶ 換価分割

 不動産を売却し、その売却代金を相続人間で分配する方法です。不動産を現金化することで、公平な分割が容易になります。代償分割との違いは、特定の相続人が当該不動産を取得するのではなく、相続人全員で、第三者に不動産を売却する点にあります。

2 不動産価値の評価方法

 上記の分割方法のうち、代償分割を選択する場合には、不動産の価値を適切に評価することが極めて重要になることは言うまでもありません。もっとも、不動産、特に土地のの評価方法については、基準価格が複数あり、如何なる評価方法を選択すればよいのか、分からない方が多いかと思います。以下に、主要な評価方法について説明します。

⑴ 固定資産税価格

 固定資産税価格は、市町村が固定資産税を課税するために評価する価格です。

  • 評価基準:基準年度(3年ごと)に市場価値の約70%を目安に評価されます。評価は土地の現況や地域ごとの標準的な価格を基に行われます。
  • 使用目的: 主に固定資産税、都市計画税の課税基準として使用されます。
  • 評価方法:市町村の固定資産評価委員会が評価を行います。固定資産税評価証明書に記載されているため、手軽に入手可能です。

⑵ 路線価価格

 路線価価格は、国税庁が毎年公表する価格で、相続税や贈与税の課税基準となります。

  • 評価基準:路線価は主要道路に面する土地1平方メートルあたりの価格を示し、通常市場価値の約80%を目安に設定されます。
  • 使用目的:相続税や贈与税の評価基準として使用されます。不動産取引の参考価格としても利用されます。
  • 評価方法:路線価図に基づき、土地の前面道路に設定された価格から評価します。土地の形状や利用状況に応じて補正が行われます。

⑶ 公示価格

 公示価格は、国土交通省が毎年1月1日時点の土地の価格を公表するもので、土地取引の指標となる価格です。

  • 評価基準:公示価格は市場価値の100%を目指して設定され、実際の取引価格に最も近いものとされています。
  • 使用目的:不動産の売買価格の目安、融資の担保評価、公共事業の用地買収などに利用されます。
  • 評価方法:土地鑑定士が現地調査や市場動向の分析を基に評価します。標準地の価格を基に、周辺地域の土地価格を算出します。

⑷ 収益還元法

 収益還元法は、不動産が将来生み出す収益を基に評価する方法です。

  • 評価基準:賃貸物件など、収益性のある不動産に適しています。
  • 使用目的:投資物件の評価や収益性を重視する不動産取引に利用されます。
  • 評価方法:将来の収益(家賃収入など)を現在価値に割り引いて評価します。収益還元率を設定し、期待される収益を基に計算します。

⑸ 比較事例法

 比較事例法は、類似の不動産取引事例を基に評価する方法です。

  • 評価基準:近隣の類似物件の取引価格を参考に評価します。
  • 使用目的:市場価格に基づいた評価を行う際に利用されます。
  • 評価方法:同一地域内の類似物件の取引事例を収集し、比較・分析します。取引時期や物件の条件を考慮して評価額を算出します。

3 実務上の評価方法の取り扱い

 不動産の評価方法には、上記のとおり、複数あり、どの評価方法を用いて、どのように算定するべきか、迷われる方も多いかと思います。

 基本的には、「時価額」により評価することになります。すなわち、売却した場合、いくらで売れるかという金額が正しい金額になりますので、公示価格を参考にしつつ、路線価価格も考慮して、不動産業者や鑑定士による評価額に落ち着くことが多いです。

4 結論

 遺産分割における不動産価値の評価は、公正で円滑な遺産分割を実現するために不可欠です。固定資産税価格、路線価価格、公示価格などの評価方法を総合的に検討し、適切な評価を行うことが重要です。

 特に、代償分割においては、評価額に基づいて代償金を算定し、相続人間で合意を形成することが求められます。不動産業者や弁護士等の専門家の助言を活用し、慎重に評価と分割手続きを進めることで、公平な遺産分割を実現しましょう。

弁護士の的場崇樹(まとば たかき)
遺産分割・遺言作成・遺言執行・遺留分など相続問題はお任せください!

初回無料相談実施中

通話
無料

お気軽にお電話ください

0120-122-138

【受付時間】8:00〜22:00(土日祝日含む)